「んーっ、気持ち良い!」
一人叫んで、華月は地べたに寝転がった。
のびかけた草が風にそよぎ、緑の良い香りが漂ってくる。
華月はこの後、長い間慣れ親しんだ町に別れを告げ、従姉妹が暮らす仙台に引っ越す。
その前に少しだけと両親に頼み込んで、よく遊んだこの公園に寄ってもらったのだ。
少しだけ、少しだけの限られた時間に、大好きなこの空気を満喫する。
寝転がって、欠伸をして、伸びをして……。
真夏の日差しを浴びて、肌が焼けていくのを感じていた。
先日、新しい家を下見した時、近所の公園を見て回ったが、このように寝転がれる場所は見当らなかった。
太陽が大好きな華月は、それがとても残念に思えてならない。
だからせめて、今だけは、
「おひさまのにおいだ……」
瞼越しに感じる光を、充分に浴びよう。
「華月」
このまま眠ってしまいそう。
心地良いまどろみの中にいた華月を、優しい声が引き戻す。
目を開けると、華月の母が彼女を覗き込んでいた。
「もう、行っても良い?」
「……うん」
少し名残惜しいけれど、きっとまた、こんな風に過せる時が来る。
そう信じて、華月は起き上がった。
寝ている間にジーパンが少し湿ってしまい、車が汚れると父に叱られてしまった。
けれど、全く後悔していない。
「仙台に、こういう所あるかな?」
「多分ね」
きっと、あって欲しい。
こんな風に、おひさまを体いっぱい感じられる、素的な場所。